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あっち、が何を表すか、あまり読み取れなかったが、お屋敷にいた組織の敵対組織──みたいなものなんだろうか。
「ぼくを今までより振り回して遊べるからか」
まつりは笑わずに、声だけで笑った。
「ふふふ、ラスボスになって、宿命の対決ってやりたいよね。悩むところを監視出来るし、配下に置けそうだし。敗北しろ、跪け」
「しない、立ち上がる」
否定はされなかったようだ。正式にではなくとも充分に配下に収まっていると思ったが、言わない。これ以上調子に乗られたくない。
なんか腹が立ってきた。
「本当、こんなやつがどうして──」
「どうかした?」
「なんでもない」
(そういえば、こんなに、気軽に話しているのも、思えばいつからだろう)
ふと、別のことを思った。少しでも寄れば無言でにらまれ、噛み付かれたような(食肉用の生き物同様に、解体されかけるような)日々もなかなか、そんなに悪くなかったのだが、いつの間にか変わってしまっていたなと。
家の前の坂道を降りて、少し進むと広い場所(T字路)に出る。そこをさらに右折すると、観光客のために最近整備されたらしい、カラフルな石が敷かれた道に出て、そこから駅などに続いたり、図書館がある道に出る。
前方、遠くの道を歩く女子高生に、歓喜の声をあげられた。まつりの知り合いらしい。手を振りながら(よく地元の女子高生にぬいぐるみやお菓子を渡されて、嬉しそうにしている)さっさと先に横断歩道を渡ろうとして、気付いたように、なかなか進まないぼくの元に戻る。
ちょっと考え事がまとまらないだけで、さすがにもう、克服したから一人で横断歩道くらい渡れるのだが……気遣ってくれるのだろうか。なんとなく、いらいらした。いや──もやもやしているのか。
(それで、こいつが少しでも背負わなくていいのなら、ぼくは……)
口には出さないけれど、案外あいつも、ぼくがそう考えると思っていそうだった。だからこそ、ぼくは考えていた。
──期待に応えて、まつりを裏切るのも、悪くない。なんて。
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