2.BOOK、日付

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「なんか、最近昔のことを思い出してたら、堪らなくなってきてね……はぁ。もう随分と長い間、コーダ(coda)ちゃんを使ってないし……」 うううう、と唸られた。 codaちゃんは、昔、まつりがいつも持っていた《高い方》のナイフのひとつである。  まつりは、それを思い出しながらなのか、うっとりと、息をついていた。触れた首の辺りからして、少し、脈が速い、気もする。  ぼくは微妙な気分になった。まつりは《何年も続けてきたこと》を、しないようにされている。ぼくがそう決めさせた。  そしてそれ自体が、あいつの欲求そのものである。 まつりの興味や興奮は、もともとはそこにしかなかった。すべてがそこに起因する。長い間、切り裂いて、赤い色にまみれて、唯一それを快感としているような、壊れた人形だったのだから。 ──そのため、あいつには悪いことをしているのだが、道徳的に悪いことをされているより、ぼくにはマシなのだ。そんな身勝手を、まつりはわかったと、ずっと承諾してくれてきた。たぶん、ぼくのために。  ちなみに他の刺激では、既に足りておらず、この程度、でしかないようだ。 (本人談。なんで言い切れるかなんてぼくは知らないし、あいつの言うことは、6割が軽口だ)  でも、だいたいのことは確かに、なんてことない、としか思っていない。そのくらい一部の感性が堕ちている人間だったことを、ぼくはなんとなくだが、感じていた。  きっとだから、嫌悪がなかったのだ。その接触は、ぼくの意思や理解など、必要としない。『そうだった』以上に意味がない。 試したいから試しているだけ。醜い情欲も、支配欲もなく、ただ純粋な好奇心があるだけ。  そして、それが示すのは『いつ衝動的になってしまうかわからない』ということだ。癖とはいうが、まつりのこれも重度の依存なのだ。 (今まで押さえていたものが、この時期になって……) ──なんて思考を表に出さないように、気をつけながら、ぼくは言う。
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