プロローグ

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 消毒を借りて、テープを貼って、そいつに箱を返したら、きちんと畳んで、何かメモしたのを(メモ帳が入っていた)入れてから、鍵をかけた。 「管理は、大事だからね」 「きみって、きっちりしてるんだね」  余計な世話であることを言ってみる。そいつは、気分を害したりせず、複雑そうに笑っていた。 「きっちり出来ないから、せめて、証拠を置いてるんだよ」 「証拠?」 なんだそれ、と思ったが、ぼくは聞かなかった。 「これ、ありがとう」  腕と首と足に貼ったテープの礼をいうと、不思議そうにしていた。それから、少し、困った顔をした。 「湿布も買えば良かったね……」 なんて、言われた。湿布ってなんだっけと思った。よく知らないから、なんだか聞けなかった。だけど、違うことを、聞いた。 「どうしてきみが、そんな顔をするの?」 「どうしてって……痛いのは、好きじゃないよ」 悲しそうに言われてしまった。わけが、わからない。 「痛いのは、ぼくだよ?」 だから、そんな顔をするのは、なぜなんだろうか。なんとなく、嫌だったから、きみは痛くないのだと、力説しようと試みていたら、そいつはただ、小さく笑って言った。 「そうだね」
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