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「もはや貴様は用済みだ。よって貴様に【封印刑】を科す!」
「なんですって……!?」
予想だにしなかった刑の言い渡しに、ラティミーナは目を見開いた。
心臓がひとつ、どくんと脈打つ。
いけない、動揺してしまった――。自身の心の揺らぎに気づくも後の祭り、広間のあちらこちらから悲鳴が上がる。
「く、苦しいっ……!」
「ああっ……!」
男女の悲痛な声に続けて、とある令息は青ざめた顔をしてその場に膝を着き、またとある令嬢は額に手を当てて卒倒する。その光景を目の当たりにした人々の間に、ざわめきが広がっていく。
過去に類を見ないほどの膨大な魔力を保持するラティミーナは、わずかに心が揺らぐだけで、魔力の波動を周囲に放ってしまうのだ。
代々魔力の強い王族や高位貴族であれば、ただ『魔力が漏れているな』程度の感覚しか覚えないという。しかし魔力量の少ない下位貴族や一般市民には、魔力中毒症に似た症状を生じさせてしまう。吐き気やめまい、貧血等々。
王子に隠れるようにして立つモシェニネ男爵令嬢が、顔をしかめて王子にしがみつく。
「うう……、ディネアック様、ラティミーナ様は、あのようにしていつも、魔力の少ない私に強烈で邪悪な魔力をぶつけてきて……。私をっ、苦しめて面白がって……はあっ、はあっ」
「ああ、モシェニネ、なんとかわいそうに。私に身を預けるがよい」
モシェニネが、わざとらしく足元をふらつかせながら平然とうそをつく。ラティミーナはこれまで、いくら彼女に挑発されようとも心を揺さぶられたことはなかった。
ラティミーナが感情を抑える訓練を受けさせられていたのは、たった今起こしてしまった現象が理由だった。
【魔力過多症】――国内で最も魔力量の多い王族をはるかにしのぐ、膨大な魔力を持つ特異体質。
その魔力量たるや、ラティミーナが産声を上げた瞬間に、ルシタジュフ王国の隅々にまで魔力の波動が行き渡ったと言われている。それどころか隣国から『何事か』と早馬が駆けつけるほどの事態だったという。
(ディネアック王子は、私に『封印刑を科す』と、そうおっしゃったの? 百年前に禁じられた刑罰なのに……!)
ラティミーナは何度も呼吸を繰り返して、気持ちを落ち着かせようとした。
しかし思いもよらない宣告を突き付けられてしまった今や、早鐘を打つ心臓はますます騒がしくなっていく。
体をこわばらせて黙り込んだラティミーナに、王子が得意げな笑みを浮かべて、さらなる追い打ちをかける。
「やはりな。貴様はいまだ魔力の制御ができておらぬではないか」
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