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美羽(みう)
高校一年生の烏丸美羽(からすま・みう)はその日、先輩とのデートに朝からウキウキしてた。朝陽(あさひ)先輩は高校三年生。同じ吹奏楽部の先輩にあたる。
楽器は、美羽がクラリネットで、朝陽先輩がアルトサックスだ。
今日はふたりで、上野の東京文化会館という大きな建物にバレエ鑑賞に来た。朝陽先輩の知り合いがその舞台に出てるらしい。
舞台はとても美しかった。夢見心地とはこのことか。「ドン・キホーテ」という、恋人同士やおじいさんの騎士、妖精さんなどが出てくる演目だった。
東京文化会館から出た後も余韻さめやらず、上野公園を歩きながら、美羽は体を揺らして音楽を再現していた。そんな美羽の肩を先輩がさりげなく抱く。
さりげないけれど、強い力で抱く。
「ねえ。行こう。上野ってホテルいっぱいあるぜ」
朝陽先輩は甘い声で囁いてくる。
美羽はその途端、理解した。
(バレエ鑑賞なんて、口実に過ぎなかったのかな。もしかして、「このため」に?)
美羽は楽しい気分はどこへやら、だ。
朝陽先輩が体を求めてくるのは、この一ヶ月でもう三回目。お出かけのたびに、体をあちこち触られる。この間はカラオケボックスで胸まで触られた。
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