平良(たいら)

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平良(たいら)

 平良は上野公園のベンチに座りながら、「むかつく光景」を一通り観察していた。  烏丸美羽は、明らかに嫌がっている。なのに、杉下朝陽という男は執拗に美羽に迫っていた。路上でキスでも迫りそうな勢いだ。 「出番やな」  平良は言うと、上野公園の中に黒い魔方陣を描いた。カラスがバサバサバサ、と不穏に飛び立っていく。  魔方陣は美羽と朝陽を飲み込む。正確には他にも、魔方陣の中に入っている人はいたが、平良はあえて、「自分を含めた三人のみ」を選んで、異空間に飛ばしたのだ。 「あ、あれ。どこだ、ここ」  朝陽という男は、あたりを見回して驚いてる。そりゃ、そうだよな。  上野公園は消え去り、ここは平良の魂の拠点、暗黒城という御殿だ。  平良は御殿の豪華絢爛な玉座に座っている。朝陽という男は、平良を不敬なことに、指さしてる。 「あいつ。なんだよ。ゲームの裏ボスみたいなやつじゃん! きっとあいつが俺たちをこんなところに!」
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