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はじまりのはじまり
20××年 12月
新橋のオフィス街
コロナ禍でリモートワークが主流になり、一時期は人通りが少なかったオフィス街。
今は街にも人が戻り賑やかになり、忘年会で稼ぎ時な飲食店。
年末の仕事の疲れを癒やすため、お気に入りのマッサージ店に駆け込む会社員の姿も見られ。
おや?恰幅の良い中年男性が足早にあるお店に向かっています。
どうやらマッサージ店のようです。
【指圧のお部屋 新橋店】
施術用のベッドに横たわり、マッサージを受けている先ほどの中年男性。仰向けで目の周りと頭のマッサージ。仕上げに座った状態で肩のマッサージ。
男性は幸せそう。
「はい。お疲れ様でした」
「はーいありがとう」
男性はガチガチだった体がほぐれ満足げだ。
「相変わらず有馬さんの指圧はよーく効くね」
「よかった~。矢口さん忙しい時期ですものね」
「また頼むよ!」
「はい!」
にこやかにお客様を見送る有馬絵美。
この物語の主人公……らしい。
閉店時間となりスタッフ達は閉店作業に追われ、仕事を終えたときは21時を過ぎていた。
「お疲れ様!有馬さん」
「お疲れ様です。店長」
店長の提案でスタッフ全員で軽く食事をして帰る事になった。
この忙しい時期は帰宅後ご飯用意するより、食べて帰った方が楽だろうという店長(男性)の母心ならぬ親心でもある。
「お待たせしました。鯖味噌煮定食です」
「ありがとうございます」
絵美は定食受け取る。
本当はあじフライかチキン南蛮な気分だが、夜遅いので揚げ物は避けたのはさりげない乙女心でもある。
絵美はいただきますと手を合わせて鯖味噌煮を頬ばる。
それを見ていたスタッフのひとりが話し掛けてきた。
「相変わらず有馬さんの箸の使い方きれいね」
「そうですか?」
「有馬さんって魚もきれいに食べるし、前にいっしょにご飯食べた神崎さん。めちゃくちゃ褒めていたよ」
「神崎さんって新宿店の店長の……懐かしい」
絵美はふと考えていが……何か思い当たる点があるのか1度箸を置く。
「そういえば私って子供の頃から肉より魚を好んで食べていたらしくて……」
「一時期母親が本気で『娘は昔飼っていたみーこの生まれ変わり』って思い込んでいて大変でした」
「『みーこ』って母親が昔飼っていた猫の名前なんですけど」
周りのスタッフ達は笑いを堪えているが、我慢出来ないのか……店の受付担当兼ネット小説家でもある田中が口の中のご飯を慌てて飲み込む……。
「やば……有馬さんのお母さん面白い」
「タイトルは『うちの飼い猫(みーこ)が娘に転生しました』で決まりだね」
「今度お母さん取材させて」
田中は小説の投稿サイトで小説を書いているが、作品の1つが書籍化していてコミカライズも決まっているそう。
そのうち『うちのみーこが娘に転生しました』ってタイトルの小説書きそうだな……。
それから田中の小説業の話しや他のスタッフの話しで盛り上がった。
「そういえば…この前神崎さんに会ったんだけど、新宿店も色々あるみたいだよ」
そう店長が話しを切り出した。
色々って?
スタッフ一同店長に注目をした。
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