第一章

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 ちょうど一週間前、僕は学校の帰りに街の方にあるショッピングモールを訪れていた。  老若男女様々な層の地元住人でにぎわう、田舎町随一のこの商業施設に訪れたのは、たいした用事ではない。ブックスタンドを買うためだった。  僕は高校生のぶんざいで行くところまで行った読書家で、自分の部屋はもうすぐで、本を置く場所が無くなるところだった。色々工夫を凝らして、最終的にブックスタンドがあればまだ耐えられることが判明した。ブックスタンドを買って、頭の中に入念に描いた配置案を実現したところで、相変わらずの本の多さに、家族には呆れられることになるだろうが。  早速、テナントに入っていた全国チェーンの雑貨屋のエリアに行って、文房具のコーナーを吟味していた。  道具は機能性だと思っていた僕は、だけどふと、柄にもなくひとつの商品に心を奪われた。  それは、尻尾を上げて振り向いている猫のかたちをした黒いブックスタンドで、ひとつでたった二百円だった。  その黒猫のブックスタンドを見た瞬間、体じゅうに電撃が走った。  僕はほとんど迷うことなくレジに向かって、無事に黒猫のブックスタンドをありったけお買い上げすることができた。といっても、12個なんて、大した数ではない……はずだ。  これを選んだのは、最近読んだ本に、猫が立て続けに出てきたからかもしれない。  そんなことを考えて雑貨屋を出ると、同じクラスのひとりの女子生徒と鉢合わせた。 「あ…………」  彼女はさっきからずっと入口に立っていたみたいで、僕と目が合うと、挨拶もせずに、だっ、と踵を返して逃げていった。
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