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内容が内容なので春蘭には席を外してもらい、部屋にやってきた珠倫に凜風はおずおずと夜伽の件を告げた。
「凜風の好きにするといいわ」
珠倫からの返事にはそう時間はかからなかった。主権を委ねられ、凜風は少しだけ慌てる。
「よろしいのですか? もしもお断りして珠倫さまの立場が危うくなったりでもしたら、元に戻った際に」
「いいの」
きっぱりと答えた珠倫の顔を凜風はじっと見つめた。自分の顔なのだが、どこか冷たく別人のように感じる。
「私、元に戻るつもりはないのよ」
まさかの発言に凜風は頭を殴られたような衝撃を受ける。そんな凜風にかまわず珠倫は続けていく。
「凜風。私ね、春嵐が好きなの。ずっと昔から、それこそ明星宮へ輿入れする前から。凜風は知らなかったかもしれないけれど、実は彼、男性なの。だから明星宮から去ることになって……」
珠倫の気持ちを聞いて驚きよりも納得する気持ちが大きい。珠倫の春蘭にかける想いは女官や幼い頃からの付き合い以上のものがあると、入れ替わってからとくに感じる場面が多かった。
普段の珠倫からは考えられないほど、今の彼女は饒舌で感情を露わにしている。
「でも私は生まれたときから明星宮への輿入れが決まっていて、春嵐とはずっと主従関係が抜け出せなかった。このままだと絶対に結ばれない。春嵐も私を想ってくれているのに……」
最後の発言に凜風の心が揺れる。珠倫は凜風の手を握り詰め寄ってきた。
「お願い、珠倫。私の幸せを願うのなら、このままの状態でいて」
「で、ですが」
「お願い。私は彼と対等な立場で明星宮を出たいの。あなただって、ここで女官としてではなく即妃として何不自由ない生活を送れるのよ? 元々の境遇を考えたらこんな幸せはないでしょう?」
今にも泣きだしそうな珠倫に、凜風は言葉に詰まる。珠倫の幸せが凜風の願いであり、すべてだった。
それなのに珠倫の懇願に、素直に頷けない自分がいた。
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