恋愛のメソッド

14/14
前へ
/86ページ
次へ
「お疲れ様でーす」  中には2人、非常勤の女性がいて 私が中に入って行くと一瞬、給湯室が 静かになったが 私は構わず2人の間を通って 冷蔵庫の扉にぶら下がっているマジックを 手に取ると缶コーヒーに自分の 名前を書き、冷蔵庫に入れた すると、片方の女性(たしか山城とか言う) が、夏美に話しかけ 「…お疲れ様です、 あの、後藤田さん…ですよね、戸籍係の 日下部さんと親しいんですか?」 「えっ?日下部さん?いえ、特には まともに話をしたこともありませんし」 私がそう言うと、少しホッとしたように 今度は、相方の女性の方が 「日下部さん、 あの時めっちゃかっこよかったじゃないですか〜 元々他の階でも、結構ファンの子が多かったけど 変な話、今回の件で益々推しの人が 増えちゃったみたいでぇ 彼女サンとかいるのかなって、 ほら、後藤田さん、さっきも日下部さんと 話をしてて、 だから仲がいいのかなって」 仲が良いって… 助けてもらったの、偶然だし さっきだって、たいした話、してないのにな 「いえいえ、確かに助けてはいただきましたけど 日下部さんの事は存じ上げてなかったです」 「そーなんだ〜」 そう言って2人は楽しそうに笑った 私もその場に合わせて作り笑いをする 私はこれ以上、アレコレ詮索されないうちに 「じゃあ私、戻りますんで」 と、言って給湯室を出た
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加