紗央里

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 母親のその面立ちに明穂は異変を感じた。 「お母さん、なに、如何したの?」 「明穂、あなた毎月幾ら貯金してたの?」 「60,000円、50,000円の月もあるかな」 「それは吉高さんにお願いしたの?」 「うん、入金は吉高さんにお願いしてあるの」 「明穂、よく聞いて」  それは(にわ)かに信じられるものでは無かったが預金通帳が全てを物語っていた。毎月の入金が確認出来なかった。 「ーーーー嘘」  しかも300万円あった貯蓄もここ1年前から目減りし現在では150万円しか残っていなかった。1年前、もしかしたら紗央里との交際が始まったのもその時期なのかもしれなかった。 「なに、明穂、知らなかったの?」 「え、あ、あっ!色々買っちゃったかな!」 「あぁ、もう駄目じゃない。なにやってるの」 「ごめんなさい」  素知らぬ振りは出来ていただろうか、不自然では無かっただろうかと脇に汗が滲んだ。そして母親が預金通帳を片付けようと引き出しを開けた。
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