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明穂は母親に大智からの手紙の朗読を願い出た。3年前の手紙にはアパートが決まらず困っている、その日暮らしで辛いなど如何にも後先考えずに渡航した泣き言が綴られていた。
「それはそうよね」
ただ2年目には住居も定まり生活に余裕が出来たらしく勉強し直していると書かれていた。
「お母さん、勉強し直すってなに」
「まさか算数ドリルじゃ無いわよね」
「流石に大智でもそれは無いよね」
「アメリカで算数ドリル?」
「意味あるの?」
「さぁ」
大智も吉高と同じ遺伝子で体を成している。地頭は良かったのだろう。便箋にはなんらかの試験を受けて合格した。今度面接を受けるとあった。
「面接ってハンバーガーショップとか」
「なんでハンバーガーなの」
「アメリカだから」
「あぁ、アメリカだものね」
2社落ちたが3社目で採用された。
「あぁ、採用良かった」
「これで食べ物には困らないわね」
「なんで」
「賄いとか無いの?」
「ハンバーガー、ぶくぶく太っていそうね」
「残念なイケメンね」
奪いに行く、待ってろ。
「奪う?待つ?なにが」
「主語述語が無い辺りが大智くんらしいわね」
「語彙力がね」
「残念なイケメンだったわよね」
次の封筒を開いた母親の顔が赤く色付いた。
「なに、なんて書いてあるの?」
「読んでも差し支えないかしら」
「差し支えもなにも、吉高さんは読んだんでしょう?」
「そうね、そうね、明穂、驚かないで頂戴ね」
「なによ大袈裟な」
明穂、愛している。
母親は便箋を持ったまま床に突っ伏して笑いを堪えている様子だった。明穂の顔も赤く色付き心臓は飛び跳ねた。
「お、お母さんこれって不倫になるの」
「なる訳ないでしょう!手も握っていないのに!」
「じゃ、浮気?」
「知らないわよ!」
そして最後の封筒を開けた母親は明穂の顔を凝視し、カレンダーを二度見した。
「明穂」
「なに」
「明後日帰って来るって」
「誰が」
「大智くん」
「はぁー?大智が!」
明穂の窮地に算数ドリルで勉強をし直しハンバーガーショップに採用された大智が日本に帰って来る。
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