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そんな時だった。往来でタクシーが停まった音がした。古き良き時代から運行しているタクシーは液化石油ガスを燃料とし、昨今の電気自動車のエンジン音とは全く異なる。明穂の聴覚はそれすらも聞き分ける事が出来た。
パタン バタン
案の定、軽い音で扉が開き、重い音で扉が閉まった。吉高はBMWで通勤し、度々訪れる母親は軽自動車を使う。今日、タクシーで乗り付ける客に心当たりは無かった。
(誰?)
その革靴の音は隣家ではなく一直線に明穂の自宅玄関へと向かって来た。
ピンポーン
ピンポーン
それは先の尖った男物の革靴の音で間違い無かった。
ピンポーン
ピンポーン
明穂は手摺りに身体を預けながらリビングへと降り立った。
ピンポンピンポンピンポン
痺れを切らしたインターフォンは連打され、明穂は恐る恐るモニターのボタンを押した。そこには見知らぬ人物が立っていた。
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