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タクシーの後部座席で明穂はデジタルカメラのモニターを見た。近距離で撮影した吉高の顔は写っていた。ただし、その面立ちが鮮明かどうかは大智に確認して貰わなければ分からない。
(画像がぼやけてなければ良いけど)
流れる車窓に虚な自分の顔が映った。
(この目が見えていたら、こんな事にはならなかったのかも)
一筋の熱いものが頬を伝う。
(もうあの家には帰りたくない)
明穂はなにか理由を付け実家に身を寄せようと考えた。
(逆に吉高さんは喜ぶわね)
自虐的な笑みが溢れた。
(あぁ、荷物、障害者手帳も保険証書も着替えも欲しいわ)
吉高の出勤時間にあわせて自宅に一旦戻る事を考えた。
(ーーーーあ!段ボール箱!)
紗央里と思わしき人物からの気味の悪い荷物の存在を大智に伝えなければならない。実家に帰宅した明穂は婦人会の会合から戻った母親に頼み大智へ電話を掛けた。
「もしもし、大智?」
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