女の影

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「ーーーよし、これで全部積み終えたな」 「ありがとう」 「冬物の服は良いのか」 「また買い直す」 「おーーー、俺が買ってやるよ」 「え、そんな悪いし」 「なに言ってるんだよ、そんときゃ俺ら夫婦だぞ」  目を腫らした明穂は力無く微笑んだ。 「ところでこれ如何するんだ。いきなり全部持って行ったら今度はおまえのとーちゃんが寝込んじまうぞ」 「大丈夫、夕方お母さんと買い物に行くみたいだから」 「その時部屋に運ぶか」 「うん」  そして2人の視線は物置の扉に注がれた。 「此処か」 「うん」  大智が物置の奥に手を伸ばすと段ボール箱が有った。確かに箱の大きさの割に中身は軽くそれはいとも簡単に取り出す事が出来た。 「開けるぞ」 「うん」  大智はその中の猫のぬいぐるみを見て顔色を変えた。カッターで引き裂かれた腹からは小粒の発泡ビーズが溢れ落ち、その中に黒いメッセージカードが埋め込まれていた。大智がそのカードを開くと金のボールペンで文字が書かれていた。 死ね  明穂を振り向いたがそのカードには気付いていない様子だった。大智はそれらを段ボール箱に戻すと蓋を閉めた。 「これをその女が持って来たのか」 「うん、宅配便の人の格好をしてたの」 「明穂の目が見えない事を知っていたのかもしれねぇな。でもなんでだ」 「それはーーー吉高さんが」 「馬鹿に付ける薬はねぇな」  大智がふと見上げると防犯カメラが目に入った。 「明穂、あれ動いてんのか」 「あれ?」 「防犯カメラ」 「うん、録画されてる」 「よっしゃ!その女の顔が写ってるかもな!」  ところが大智が確認したところ肝心の顔が撮れていなかった。ただひとつ、使われた車が宅配便業者の車では無くごく一般的な軽自動車である事が判明した。 「この車種、ナンバープレートは  、レンタカーか」 「レンタカー」 「ちょっと当たってみよう」 「分かるの?」 「車借りる時に身分証てぇのを出す決まりなんだよ」 「この日付に借りた女が、紗央里なら脅迫行為に当たるな」 「強迫行為」 「おまえへの精神的苦痛で慰謝料上乗せだ」 「慰謝料」 「がっぽり頂くぞ」  そしてもうひとつ紗央里に繋がるであろう事実が判明した。 「明穂、紗央里は病院関係者かもしんねぇ」 「如何して」 「この段ボール箱、点滴用のパックが入っていたもんだ」 「点滴」 「看護師かもしんねぇな」  顔の分からない女の影が見えて来た。
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