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吉高の家にタクシーで乗り付けた大智はその隣家を訪ねた。
「ごめん下さい」
「はーい」
「弁護士の仙石です」
「はいはいはい、ちょっと待ってね」
インターフォン越しに慌てた様子の年配女性は明穂が使っていたデジタルカメラを持って玄関先に顔を出した。
「もうね、使い方が難しくて」
「ありがとうございます」
数日前、大智はこの近隣住宅を訪ね歩き吉高の家に若い女性が頻繁に出入りしている事を確認した。ただ新興住宅地という土地柄若い世代が多く昼間から夕方に掛けて皆家を空ける。困ったなとゴミステーションで考えあぐねていると上手い具合に吉高の隣家に年配の女性が居ると耳にした。
「すみません」
「どちら様ですか?」
「こういう者です」
金の弁護士バッジを付けた大智が破壊的に見栄えの良い笑顔でお辞儀をし、佐倉法律事務所の名刺と菓子折りの箱を手渡したところ年配の女性はいとも簡単に大智を家の中へと招き入れた。
「そうなのよあの声が煩くて」
「心中お察し致します」
そこでデジタルカメラを手渡した。その若い女性が吉高の家に入る場面を密かに撮影して欲しいと依頼した所、紗央里が玄関の鍵を開ける場面と迎え入れる吉高の笑顔が鮮明にSDカードに収められていた。
「ここを回したら赤いランプが点いて写真が撮れなかったの」
「ありがとうございます!」
「え、それで良かったの?」
「はい!」
数枚の画像の他に紗央里が吉高と言葉を交わしながらBMWに乗り込み口付けを交わす動画が撮影されていた。次々と容易く手に入る切り札に大智は笑いが止まらなかったがその反面、実兄の愚かさに腹が立ち情けなくなった。
(父ちゃんと母ちゃんになんて言えば良いんだ)
次に大智は吉高の家の玄関扉に鍵を差し込んだ。
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