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玄関ポーチに足を踏み入れると陰鬱な空気が漂っていた。洗濯機の傍に置かれたカゴには生乾きのバスタオル、台所のシンクにはインスタント麺が貼り付いた鍋がタライに沈んでいた。リビングテーブルには飲みかけのビールや缶チューハイが放置され小蝿が飛んでいる。
(ーーー最悪だな)
紗央里もこの家に来た当初は吉高の洗濯物を畳んでいたが本性を表し家事などは一切せず始終2人で性行為に耽って居るのだろう。人としての理性の欠片も無い落魄れた吉高に怖気がした。
(犬畜生、動物以下だな)
埃が溜まった階段を上ると寝室の扉を開けた。栗の花の匂い、性液特有の臭いがシーツに絡まり触れる事さえ憚られた。
(見つからなかったか。てかこんな物があるなんて思ってもいねぇんだろうな)
大智は結婚式のフォトフレームを退かして録画機能付きのペット用見守りカメラを取り出した。撮影された内容は到底直視出来ず大智は顔を背け、フォトフレームをそっと伏せた。
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