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「それで島崎さんのご用件は一体どのような」
島崎はパソコンを起動させると紗央里の父親に液晶モニターを向けた。そこには点滴パックの段ボール箱が映し出された。
「ご覧ください」
「これが、これがどうしましたか」
父親は画面に顔を近付けると訝しげな顔をした。
「佐藤教授、これは金沢大学病院で使用されている点滴パックの段ボール箱でお間違いないでしょうか?」
父親は一瞬考えたが首を縦に振った。
「間違いない。ただこの点滴は隣の国立病院でも使っている。」
「そうですか」
「そうだ」
次に島崎は腹を引き裂かれた猫のぬいぐるみを指差した。その不気味さに父親は顔を顰め腕組みをした。
「悪趣味な悪戯だな」
大写しにしたぬいぐるみの中に黒い物が見えた。「これはなんだね」と指を差すと島崎は胸のポケットから小分けのジップロックに入れた黒いカードを目の前に差し出した。それには金のボールペンで死ねと書かれていた。
「なんだこれは」
父親が手を伸ばすと島崎はそれを素早くポケットに仕舞い「これは重要な証拠となりますのでお渡しする事は出来ません」と一蹴した。
「なんの証拠だ」
「脅迫罪です」
「脅迫罪、脅迫罪だと?」
「はい、この段ボール箱を受け取った被害者の方は精神的苦痛を強いられました」
「そ、それがうちの娘となんの関係があるんだ」
島崎は仙石吉高宅の玄関先に設置した防犯カメラの動画を見せ、犯行に使用されたレンタカーのナンバーを示した。防犯カメラには宅配便ドライバーが先程の段ボール箱をその家の住民に手渡し玄関先に停車してあった軽自動車に乗り込む場面が鮮明に映っていた。
「宅配便業者じゃないか」
「宅配便業者がレンタカーを使用するとは考えられません」
「確かに、そうだが!」
座敷机には紗央里の免許証の写しとレンタル受付書類のコピーが置かれ、紗央里はそれを中腰で覗き見ると両手で口を覆った。
「これは金沢駅東口のレンタカー会社を紗央里さんが利用した履歴になります。使用した車種、色、ナンバープレート、レンタルされた日付は先程の段ボール箱を配達した時間帯と合致しました」
父親の形相が変わった。
「どう言う事だ!」
「我々は紗央里さんが宅配業者を装いレンタカーを利用し被害者宅にこの段ボール箱を持ち込んだのではないかと考えています」
「まさか!」
「証拠は揃っています」
「紗央里が人様にその様な悪戯をする理由がない!」
「悪戯ではありません。脅迫です」
父親が背後を振り向くと紗央里は微動だにせず畳の縁を凝視していた。
「なんの理由があってーーー!」
「佐藤教授、落ち着いて下さい、もう2、3お伝えしなければならない事があります」
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