ひかりのなかへ

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 荘厳なパイプオルガンが仙石家と田辺家の人々を包み込み、マリアと百合の花に彩られたステンドグラスの光の中に大智と明穂が向き合った。 「汝、仙石大智は、この女、田辺明穂を妻とし、良き時も悪き時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分つまで、愛を誓い、妻を思い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」 「誓います」 「汝、田辺明穂は、この男、仙石大智を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分つまで、愛を誓い、夫を思い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻のもとに、誓いますか?」 「誓います」  大智と明穂は牡丹雪(ぼたんゆき)が舞い落ちる12月24日、祭壇で熱い口付けを交わした。それは雪を溶かす程に長い口付けで、大智の母親がタキシードの裾を引っ張り「良い加減にしなさい!大智!」と声を掛ける程だった。 (ーーー吉高さん)  教会の鐘が鳴り響くその片隅には髪を短く刈り上げた吉高の姿があった。その隣には誰も居ない。大智は明穂の手から百合の花束を奪い取るとそれを吉高に押し付けた。 「な、なに」 「おまえも見つけろよ」 「大智」 「今度は不倫なんかするんじゃねぇぞ、神さんの前で誓え」 「大智」 「この花渡す女見つけて父ちゃん母ちゃんを安心させてやれ」 「わ、分かった」 「約束だぞ」  吉高は百合の花束に顔を埋めて泣いた。
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