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第1章 疑似兄妹 プロローグ*
パトリツィアは、赤ん坊の時から決められた婚約者ルイトポルトと結婚できて幸せだった。でもそれは、権力欲にまみれた実父の陰謀の上に成り立っていた偽りの幸せだった。
彼女は、愛する夫ルイトポルト――クレーベ王国王太子――のために身を引こうと心に決めた。これから断罪される宰相の娘が次期国王の妃でい続けていいはずがない。優しいルイトポルトが王太子としての責任とパトリツィアへの愛に挟まれて苦しむのをこれ以上見ていらなかった。
でも身を引く前に1度でもいいから身も心も彼の妻になりたいとパトリツィアは切望する。週1回の閨でパトリツィアは愛撫されているだけでいつも気を失い、ルイトポルトは宰相の手前、パトリツィアを最後まで抱いた体を装っている。それにパトリツィアは気付いてしまったのだ。
革命の機運が高まってくると、ルイトポルトは半幽閉状態になり、パトリツィアは彼と会えない日々が続いて気が気でなかった。側近アントンの協力でこっそり会えることになり、ルイトポルトは夫婦の寝室にやって来てパトリツィアに宰相の断罪を予告した。パトリツィアを信頼している故の告白だ。彼はパトリツィアと幼い弟ラファエルは保護すると約束したが、パトリツィアは覚悟を決めて幼馴染でもある夫に懇願した。
「ルイ兄様……私を本当の妻にして……お父様の断罪後、私は罪人の娘……兄様と私は2度と会ってはいけないの。お願い。兄様の愛を私の身体に刻み付けて……兄様に会えなくなっても思い出せるように……」
「あ、会えなくなるなんて、そんなことはないよ」
「いえ、そんな訳にいきません。だから今だけ……お願い、兄様」
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