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3.孤児院から見えた社会の闇
ルイトポルトが成長しつつあるパトリツィアとの距離をどんどん縮めていったのとは対照的に、彼の母である王妃マレーネと国王アルフレッドの関係は冷え切ったままで、もう何年もお互いに公然と愛人を囲っている。それどころか、2人とも公務そっちのけで愛人と旅行や買い物にうつつを抜かし、政治は宰相まかせになっていった。宰相はそれを利用して蓄財し、権力を維持することに腐心していた。
そのような政治が行われていては、貧富の差がますます広まって治安が悪化していくのも無理はなかった。中央政府の重税に苦しむ貴族の領地経営は苦しくなり、ごく一部の大貴族以外は台頭しつつある商人のほうが裕福なこともまれではなかった。
王の放漫政治に憤って国の将来を憂う貴族派と平民主体の民主派が台頭しつつあったが、この2派の目標は一致していなかった。貴族派は王の権力を削いで貴族の合議で進める政治を目指していたが、民主派は王室の廃止、完全普通選挙導入による平民の政治参加を主張していた。それどころか、民主派内の過激派は革命による王族と高位貴族の処刑による排除と貴族制度の完全廃止を目指していた。
ルイトポルトの若き従者アントンは、そんな混沌とした国の現況を憂う臣下の1人だ。彼は元々、父親が宰相の腹心である関係でルイトポルトの側近となったが、今は父親の意思とは関係なく、国と主人のために働きたいと思うようになった。しばらくは思う所を黙っていたアントンだったが、仕えるうちにルイトポルトが勤勉かつ優秀で将来有望な王子だとわかり、国民の困窮した状況をルイトポルトに見せて反応を見たくなった。
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