4.貧民街

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4.貧民街

 アントンはルイトポルトを発奮させるため、クレーベ王国の闇をもっと見せようと決意した。そのために貧民街を視察しようと提案したが、貧民街は高貴な者が安全に視察できる場所ではないため、もちろん公式な視察ではない。アントンの子飼いの騎士1名とアントン、ルイトポルトの3人で貧民に身をやつして貧民街を見学するのである。  貧民のような恰好をする以上、剣や銃をあからさまに腰にぶら下げて行くわけにはいかない。それぞれ短剣をズボンの中に、拳銃をカバンの中に忍ばせ、シャツの下には目立たない厚さの防弾チョッキを着こんでいくことになった。ルイトポルトはまだ12歳だが、パトリツィアの護衛騎士ゲオルグに負けて以来、剣や射撃の訓練に熱をあげており、優秀な成績を修めている。  決行の日は、アントンと志を同じくする家庭教師の授業をルイトポルトが受けるふりをして従騎士の変装をして王宮を出て行った。平民街にあるアントンの協力者の家で貧民に変装し、徒歩で貧民街へ向かう。その間に、3人は注意事項をもう一度確認した。 「この家を出たら殿下に敬称は使わず、ヤンと呼びます。私達が殿下の両側か前後を歩きますが、殿下はその間から出ないようにして下さい。住民に見られてもすぐに目をそらすように。滞在時間は長くできません。危険を感じたらすぐに戻ります」  これ以降、ヤンというのがルイトポルトのお忍びの時の名前となった。
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