4.貧民街

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 貧民街に近づくにつれて、ごみと排泄物の混じった悪臭が強くなり、物乞いや行き倒れらしき人々が増えてきた。外壁と屋根を板や布で作った小さなバラック小屋が汚い道の両側に所狭しと建っている。いくら3人が貧民らしき恰好をしていても、ルイトポルトのそこはかとなく感じられる高貴な雰囲気と主人を守ろうとする2人の殺気で住民にはすぐによそ者とわかってしまい、3人はバラック小屋の前でブラブラしている住民にじっと見られて居心地が悪くなった。  そのまま道なりに行くと、バラック小屋がはみ出して道が狭くなっている場所に出くわし、道の両側に溜まっているごみと排泄物を避けるため、3人の隊列が少し乱れた。その隙に小さな影がルイトポルトにアタックしようとし、騎士が素早くその腕をひねりあげた。 「いてぇ! 離せっ! レディに何しやがるっ!」  小さな影は、汚い頭陀袋に頭と手足用に穴を開けたような物を被り、脂汚れでベタベタした黒いざんばら髪に薄汚れた顔とヒョロヒョロした手足をしていて一見、少年のように見えた。ルイトポルトよりも2、3歳程年下の子供のように見えたが、貧民街の子供は栄養状態が悪いので、一概には何とも言えない。 「お前、女だったのか!」 「失礼だな!」  騎士が驚くと、少女は憤慨した。
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