5.ストリートチルドレン

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5.ストリートチルドレン

 ルイトポルト達が貧民街を去ってから、お菓子をもらった少女ペトラと同じような格好をした薄汚れた子供達が通りに現れ、ペトラが大切そうに胸に抱くクッキーの包みに手を伸ばした。 「これはあげないよ!」 「ケチ!」 「何とでも言え! やらないものはやらない!」  ペトラはクッキーの包みを抱えたまま、通りを走って逃げた。しばらくして栄養状態の悪い子供達は、足の速い彼女を追いかけるのを止めたようだった。ペトラは、誰もついてきていないのを確認して走る速度を緩めて歩き出した。 「ペトラ! これやるよ。食べな」 「今日はいい物もらったんだ。兄さんにもあげる」  フェルトのように固まった焦げ茶色の髪に鳶色の目をした浅黒い顔の男の子がペトラに近づき、硬くなったパンを差し出した。ペトラはクッキーの包みを開けて彼に三分の一を渡した。  ペトラは十代半ばから後半ぐらいの彼を『兄さん』と呼ぶが、実際には2人に血縁関係はない。ペトラの母が数年前に亡くなった後、食べ物を調達できなくてフラフラだった時に彼がペトラに食べ物を分けてくれた。貧民街は弱肉強食で他人同士が食べ物を分け合う事は滅多にない。それどころか奪い合いだ。なのに彼はペトラに食べ物を分けてくれて野宿しても比較的安全な場所も教えてくれた。それ以来、ペトラは彼を兄のように慕っている。
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