5.ストリートチルドレン

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「これ、随分高級そうなクッキーだね。どうしたの?」 「兄さんと同じぐらいかちょっと年下の男の子にもらったんだ。ここで見たことない人だったよ」 「ふーん。こんな高級そうなクッキーを惜しげもなくくれるのは、もしかして意識が高いお貴族様だったのかもね」 「『意識が高い』?」 「ああ、俺らを哀れがって救おうとする人達のことだよ」 「『あわれ』?」 「うん、かわいそうって思われてるってこと」 「それは頭にくるけど、救うってここから出してくれるってことでしょ? なら何を思われても構わないよ」 「駄目だよ! アイツらと関わり合わない方がいい!」 「どうしたの、兄さん? なんでそんなに怒るの?」 「あ……ごめん。怒ってないよ。ちょっとお貴族様にはいい思い出がないから興奮しちゃっただけ」  ペトラはクッキーをくれた少年の正体をどうやったら知ることができるのか、義兄に聞こうと思っていたが彼の興奮具合を見て諦めた。その代わり、貧民街で『おばあ』と呼ばれていて何でもよく知っている占い婆さんの所へ行ってみようと思いついた。 「おばあの所へ行ってくる!」 「……俺は行かない。いつもの寝場所で待ってるよ」  ペトラの亡き母は、占い師のおばあと親しくしていた。おばあは、義兄ヨルクのように積極的にペトラを助けてくれる訳ではないが、ここぞと言う時に助かるアドバイスをくれる。だがヨルクはおばあを嫌っていて滅多におばあの所へ一緒に来ることはない。  おばあの占いはよく当たると評判で、貧民街の人達も占ってもらうが、彼らは料金を払えないので占いの対価として食料や衣類などの物品をおばあに献上している。だからおばあの占いの稼ぎはほとんど貧民街の外から来ている。彼女は王都のそこかしこで神出鬼没なので、おばあに占ってもらえること自体が幸運だと王都民には噂されている。  ペトラは、おばあの住んでいる貧民街の端の方に向かった。しばらく歩いて隙間だらけの今にも倒れそうな掘っ立て小屋の前に着くと、何も言わずに入っていく。するとすぐに仕切り代わりのボロ布の向こうからしゃがれた声が飛んできた。
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