6.占い婆さん

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6.占い婆さん

 掘っ立て小屋の中のボロ布の仕切りをめくって出て来たのは、ペトラよりちょっと大きいだけの小柄な老婆だった。 「ペトラ! 人んちに黙って入るんじゃないよ!」 「おばあはどうせ私が入って来たことが分かるんでしょ? ならいいじゃない」 「全く! 屁理屈を言うんじゃないよ。それで今日は何の用なんだい?」 「今日ね、このクッキーをくれた男の子がいたんだ」 「ほほう。私にもそのクッキーをくれるのか」 「違うよ! じゃなくて……おばあにもそんなこと言われなくても分けてあげるつもりだったけど……」  兄に分けた残りの半分のクッキーをペトラは粗末なテーブルの上に直接置いた。 「ちょっと! 直接置かないでくれよ」 「え?」 「いや、そうだね。何でもないよ」  おばあはポケットからハンカチを出してその上にクッキーを載せ替えた。貧民街に育ったペトラには、おばあの清潔へのこだわりが時々理解できない。
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