61人が本棚に入れています
本棚に追加
7.答え合わせ
ルイトポルトは貧民街へのお忍びの時、カバンの中にクッキーの包みをいくつか忍ばせていてその1つを貧民街で出会った少女にあげた。だがアントンに言わせれば、それは危機感が欠如している行動だった。
「なぜあの少女にクッキーを渡したのですか?」
「お腹がすいてそうだったから……それに物をあげてはいけないと言わなかっただろう?」
「殿下があの包みを渡した時、たまたま誰も住民が見てなかったからよかったですが、もし見ていたら自分にもくれと殺到して大変なことになったかもしれないのですよ」
「誰も見ていない隙に渡したんだ」
「だとしても、クッキーを少しあげただけでは只の自己満足です。小腹を満たすことはできても毎日の食事の足しにはなりません」
「それはわかっている。その答えを探すのが今回のお忍びの目的だろう? あのクッキーは小腹を満たすためだけじゃない。君を助ける人はいるっていうシグナルだよ」
「そうだとしても危険でした。この次からは気を付けて下さい」
アントンは、これ以上議論してもルイトポルトが折れないとわかっていたので、矛を収めた。
最初のコメントを投稿しよう!