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8.ペトラの行方
余所から来た少年ヤンにクッキーをもらった日、ペトラはいつもの寝場所に戻って来なかった。ペトラの兄貴分のヨルクは貧民街中を探し回ったが、ペトラは見つからなかった。ペトラに最後に会った時、彼女は占い師のおばあの所へ行くと言っていたから、本当なら最初におばあに聞くべきだったのだが、ヨルクは彼女と因縁があり、避けていた。でももうそんなことを言っていられない。ヨルクはおばあの掘っ立て小屋に向かった。
ヨルクは掘っ立て小屋の前に着くと、建付けの悪い木の扉を乱暴に叩いた。
「おい、婆さん、いるんだろ?」
何度かバンバン扉を叩くと、軋んだ音をたてて扉が開いた。
「そんなに乱暴に叩かなくたって聞こえるよ」
「そうかよ。てっきり耄碌して聞こえてないかと思ってた」
「そんな悪態つきに来ただけだったら、もう帰りな」
おばあは機嫌を悪くして扉を閉めようとした。老婆にしては予想外に力強く、ヨルクは押し出されそうになったが、すんでの所で足を隙間に入れて扉を閉めさせなかった。
「そんな馬鹿力で押さないでくれよ。ボロ扉なんだから壊れちまう」
「そんなことより、ペトラをどこにやった?」
「扉が壊れるのは死活問題なんだけどねぇ……」
「ペトラをどこにやった?!」
目を三角にして怒鳴るヨルクの剣幕におばあはため息をついて『やれやれ』ともう1度口を開いた。
「あの子をずっとこんな所に押し込んでいていいと思っているのかい?」
「答えになってない!」
「入りな。軒先でこれ以上口論したら目立つ」
ヨルクは渋々掘っ立て小屋の中に入った。
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