9.マンダーシャイド伯爵家

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 ペトラがなんとか洗濯を終えて洗濯物を干した後、洗濯を押し付けた先輩下女がやって来た。 「何だよ、これ! べちゃべちゃじゃないか。もっと絞らなきゃ乾かないだろう? で、こっちはアイロンかける物だよ。乾かす前にアイロンかけなきゃ皴になっちまうじゃないか!」  そこに突然、下女とは違うお仕着せを着た若い女性がやって来て2人に声をかけた。 「後は私が教えておきますよ」 「うわあ、びっくりした! エレナさんですか。突然声をかけないで下さいよ、寿命が縮まる思いをしましたよ」 「すみません。でも後は私に任せて下さい」 「でもこれは下女の仕事で……」 「新しい使用人の教育も若旦那様に任されているんです。それが侍女でなくて下女でも同じことです」 「そうですか。そこまで言うなら……じゃあ、頼みますね」  その女性は下女とは違うお仕着せを着ており、エレナと名乗った。小さな鼻とそばかすがかわいい少女のような容貌に反して、女のペトラでもつい目を向けてしまう程、お仕着せの胸がパツンパツンに張り出していた。ペトラはその時知らなかったが、彼女が着ていたのは侍女のお仕着せだった。エレナは本来、侍女の仕事でない下女の仕事もペトラに親切に教えてくれて数日後には飲み込みの早いペトラは仕事を1人前にできるようになった。
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