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1.小さな婚約者
7歳のルイトポルトが婚約者としてパトリツィアと初めて対面した時、ツェーリンゲン公爵令嬢パトリツィアは生まれてまだ数ヶ月の赤ん坊だった。きょうだいのいないルイトポルトは、赤ん坊に興味津々で目の前のゆりかごの中を覗いた。
パトリツィアの父である宰相ベネディクトは、ルイトポルトに話しかけた。
「この子が殿下の婚約者パトリツィアです。かわいがってやって下さい」
「『こんやくしゃ』?」
「国王陛下と王妃陛下のように将来結婚する約束をした男女の事です」
父王アルフレッドと母の王妃マレーネはお互いに愛人を持っていて公式の場で夫婦として取り繕っているだけであり、息子に無関心で理想の両親とは程遠い。結婚したらそんな両親のようになるのかとルイトポルトは子供ながらに思い、急速に目の前の赤ん坊への興味を失った。ベネディクトはそれに気付いたのか、ルイトポルトの目を再びゆりかごの中へ向けさせようとした。
「殿下、パトリツィアの手を見て下さい。こんなに小さくてかわいいでしょう?」
ルイトポルトが渋々もう一度パトリツィアを見ると、パトリツィアはキャキャキャと笑い、何かを求めるかのように両手を上に上げた。その瞳はガラス玉のように澄んでいて青空のようだ。
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