16.アントンの結婚*

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 アントンが結婚式の宴の後、夫婦の寝室に入ると、かわいそうなくらい緊張して震えているリーゼロッテが寝台に腰掛けて待っていた。露出が多くて肌が透けて見える、扇情的な夜着は、鞭打ちの古傷がある上に貧相な身体のリーゼロッテが着ると、かえって哀れに見えてしまう。  アントンは、狼の前で震える子兎のような新妻を目の前にすると、滅茶滅茶にしてやりたくなる気持ちが腹の底から沸き起こってきた。だがそれを必死に抑え、隣に座って優しく話しかけた。それでもアントンは、初夜はリーゼロッテの覚悟が出来てからでいいなどと、上辺だけとしても優しい言葉をかけるつもりは毛頭なかった。 「そんなに緊張しないで。でも、これは政略結婚だから初夜は引き延ばせないんだ。父上達も期待しているし。ごめんね」 「も、もちろん、承知しております……」 「さあ、こっち向いて」  アントンがリーゼロッテの顎を掬った時、彼女は緊張のあまり口をきつく閉じてしまった。アントンがそこにキスをしたので、歯が当たってゴチンと音がした。 「ごめん、痛かったね。僕がキスしたら、口を少し開けて目をつぶって鼻で呼吸してくれる?」  アントンはリーゼロッテに再びキスをし、舌を差し入れた。リーゼロッテは驚いてビクッとして舌を引っ込めた。 「舌を引っ込めないで絡めて……そう、いいよ……」 「んん……んふぅ……」  リーゼロッテがキスで蕩けた様子になると、アントンは彼女を寝台に押し倒し、彼女の夜着を乱暴に引き裂き、薄い胸を露わにした。肩から上腕にかけてみみずばれのような古傷も丸見えになり、リーゼロッテはもう片方の腕で隠そうとしたが、アントンに腕を寝台の上に押さえつけられた。 「ア、アントン様?! どうして?! い、いやっ!」 「初夜は延期しないんだから拒否しちゃ駄目だよ。大丈夫、こんなの普通だよ。初夜の夜着は破るためにあるんだ」 「そ、そうなんですか?! で、でも私の肌はみ、醜いので、そ、その、男性はする気をなくすると……」 「誰がそれを言ったの?」 「継母と妹が……」 「チッ、碌でもない奴らだ」 「え?! 今、なんておっしゃりましたか?」 「なんでもないよ。君が頑張った証だ。醜くなんてない」 「あっ、そ、そんな所、だ、駄目……ああ……」  アントンは、彼女の茶色いみみずばれの痕に舌を這わしていった。美しい夫が醜い傷痕を舐めている様は倒錯的で、古傷からリーゼロッテの頭のてっぺんと子宮に向かって痺れがビリビリと伝わっていった。  アントンは、肩の古傷からほとんど平らな胸へ舌を這わせた。舌が胸の飾りに届くと、吸い付いて口の中で転がし、反対側の突起は指で摘まんでつねったり、引っ張ったりした。それを交互に執拗に行い、とうとう乳首が唾液でテラテラと光って赤いサクランボのようにツンと尖った。 「ああっ! ア、アントン様?!」  アントンは乳房のそこかしらをちゅうっと吸って赤い花びらを散らし、時には歯形をつけた。 「いや、痛い、や、止めて……」 「初夜なんだから、拒否しちゃ駄目。それにまだまだこんなの序の口だよ」 「そ、そんな……」
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