17.人形令嬢の誕生

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17.人形令嬢の誕生

 2年前にパトリツィアの実母エリザベートが亡くなって以来、パトリツィアは大層落ち込んでいた。その上、喪が明けて父親がすぐに再婚したので、滅多にない逢瀬の機会にパトリツィアはルイトポルトに思いきり甘えるようになっていた。  ある日、パトリツィアはルイトポルトに王宮で会うために王宮へ馬車で向かったが、継母カロリーネと義妹ガブリエレも同行しており、せっかくの浮き浮きした気分も沈みがちになった。そんな義娘をカロリーネは忌々しそうに見た。 「せっかく王太子殿下にお会いできるのにそんな辛気臭い顔をしないでちょうだい」 「はい、お継母様、申し訳ありません……」 「お義姉様は暗くて本当に気分が悪くなるわね。王太子殿下にお会いできるせっかくの機会を台無しにしないで欲しいわ」  再婚当初からカロリーネは娘ガブリエレと共にルイトポルトに目通りを願っていたが、ルイトポルトは婚約者同士の逢瀬に来るような無粋な真似をしないで欲しいと言って断っていた。だがベネディクトのとりなしで再婚後半年にしてようやくカロリーネは娘ガブリエレを連れてルイトポルトに会えることになった。似姿で見た眉目秀麗な王太子に憧れているガブリエレはその事に大喜びした。パトリツィアは、その知らせを聞いて以来、ルイトポルトが自分だけの王子様でなくなるような気がして気が沈んでいた。  馬車の停車場まで迎えに来ていたルイトポルトを見てパトリツィアの沈んだ気分は一転した。パトリツィアは口うるさいカロリーネが付いて来ているのをすっかり忘れ、馬車から転がり落ちる勢いで降り、ルイトポルトに駆け寄って抱き着いた。ルイトポルトもパトリツィアに甘えられて嬉しそうだった。 「ルイ兄様!」 「フフフ、パティは相変わらずお転婆なレディだね」  カロリーネとガブリエレは、パトリツィアの後から御者の手を借りて優雅に馬車から降りてきたが、抱き合う2人を苦々しく見た。
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