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2.幼き日々の交流
パトリツィアがごく幼い頃、民主化運動はまだ下火で治安はそれほど悪くはなかったので、パトリツィアは婚約者と交流するために、父親が出仕するついでにしょっちゅう王宮に連れて来られていた。逆にルイトポルトもごくたまにではあるが、ツェーリンゲン公爵家のタウンハウスまでパトリツィアを訪ねることもあった。
「パティ、こっちへおいで」
「ルイにいたま!」
ルイトポルトはパトリツィアと会うと、いつも彼女を膝の上に乗せて甘えさせた。ルイトポルトはパトリツィアの頭をよしよしと撫でながら、彼女がたどたどしい口調でいろいろしゃべるのを聞くのが好きだった。そのうちにしゃべり疲れたパトリツィアがこくりこくりと船をこぐようになると、ルイトポルトの寝台で少し寝かせてあげてからツェーリンゲン公爵家の馬車までルイトポルト自ら彼女を運んであげるのがルーチンだった。
いつしかパトリツィアは最後まで起きていられないのがしゃくにさわって膝の上に乗せられたり、頭を撫でられたりするのを拒否したこともあった。でもそうすると、ルイトポルトが悲しそうにパトリツィアを見るので、彼女のささやかな抵抗も大抵中途半端に終わるのだった。
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