2.幼き日々の交流

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 ゲオルグに出会ってからしばらくしてルイトポルトは久しぶりにツェーリンゲン公爵家を訪れた。先触れは出したが、パトリツィアを驚かせようと思って彼女には内緒にしてくれるように公爵家の執事に頼んでおいた。ルイトポルトは、パトリツィアが予期せぬ訪問に大喜びして自分に飛びついてくるだろうと想像するだけで顔が綻んだ。12歳のルイトポルトにとって5歳の婚約者は恋愛対象ではないものの、赤ん坊の時からかわいがっていて目の中に入れても痛くない妹のような存在になっていた。  執事の案内でパトリツィアのいる所に着くと、そこはタウンハウス敷地内の公爵家の騎士団の訓練場だった。執事がパトリツィアと侍女ナディーンに王太子の訪問を告げようとしたが、ルイトポルトはパトリツィアを驚かせたくて目で制止した。こっそり背後から近づいていくと、パトリツィアが目を輝かせて騎士達の練習を見学しているのに気付いた。その視線の先には、練習試合をする若手騎士2人がいた。よく見れば、そのうちの1人は先日の生意気な新人騎士ゲオルグだった。  ゲオルグは少し年上の若い騎士と練習試合をしており、白熱の接戦の末に相手を下した。パトリツィアとナディーンが大喜びしているのが目に入り、ルイトポルトの胸に不快感がむくむくと湧き上がってきた。しかもゲオルグがパトリツィアとナディーンの所に来て何か話しており、そこに騎士団長が来て大声で剣筋を褒めている。ルイトポルトはむしゃくしゃしてパトリツィアを驚かそうという当初の計画を忘れて大股で4人に近づいた。するとようやくパトリツィアが彼に気付いて飛びついてきた。
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