2.幼き日々の交流

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「にい()ま! ゲオルグの剣、見た? すごいよ!」 「へぇ。パティの新しい護衛騎士だっけ? 僕だって強いよ。――おい、ゲオルグ、勝負しよう」 「殿下、困ります」 「何言ったって僕はやるよ」  去年からルイトポルトに専属侍従として仕え始めたアントンが主人を窘めたが、パトリツィアに関する事でルイトポルトが妥協しないことは知っており、それ以上は反論しなかった。アントンはルイトポルトより10歳年上の22歳で臣下であると共に、よき兄貴分にもなりつつある。 「わかりました、受けて立ちます。一切忖度なしですよ」 「おい、ゲオルグ! 不敬だぞ」 「いや、いい。当然の事だ」  先ほどの練習試合には刃を潰した模擬剣を使っていたが、騎士団長はルイトポルトとゲオルグに木剣を渡した。 「さっきと同じ剣を使いたい」 「刃を潰してあるとはいえ、まともに喰らったら大怪我します。木剣でなければ、今回の勝負はなしとします。我が騎士団では私闘は禁止となっていますので」  そこまで言われると木剣を使わないで勝負を回避する選択肢はルイトポルトにはなかった。  15歳の割に体格のいいゲオルグと対峙すると、12歳の平均的な体格のルイトポルトは小さく華奢にしか見えなかった。ルイトポルトは悔しかったが、体格差はスピードで補おうと考え直した。試合開始の合図と共にゲオルグに速攻で攻撃を仕掛けたが、剣筋を見切られ、気が付いた時には首筋に木剣を当てられいた。 「勝負あり! 勝者ゲオルグ!」  その声を聞いてゲオルグは木剣を下げ、ルイトポルトに手を差し出した。ルイトポルトはそれを無視して起き上がり、パトリツィアの方を見た。 「ゲオルグすごい!」  パトリツィアはさっきと同じように目を輝かせてゲオルグを賞賛したが、隣にいた侍女ナディーンが屈みこんでパトリツィアに何か耳打ちすると、途端にしゅんとなった。 「にい()ま、ごめんなさい……」 「どうして謝るの? 僕が弱かっただけだ」  ルイトポルトは疲れたと言って用意してあったお茶も飲まずに王宮に帰っていった。  それ以降、ルイトポルトは近衛騎士団長に教えを乞い、以前にも増して剣技や射撃を鍛えるようになった。
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