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5.見合い
リーゼロッテの見合い相手アントンは既に28歳だが、両親の再三の結婚催促にもかかわらず、未だに独身である。数年前に婚約寸前までいったが、結局土壇場で止めてしまった。アントンは、両親や国王夫妻の夫婦の在り方を見て結婚する気になれないのもあるが、何より家族を持つのはルイトポルトと協力するクーデター計画にとってリスクになりかねない。ただ、宰相ベネディクトの腰巾着の父親パスカルのルートを使って二重スパイをするためにも、騙された振りをして何度かお見合いの席についただけで、いつも婚約を成立させなかったし、今回も成立させるつもりはなかった。
一方、リーゼロッテは、元々結婚願望を持っていなかったが、結婚すれば継母と異母妹から離れられていびられる事もなくなるし、父親の機嫌もよくなるので、結婚に前向きになりつつあった。だがそんな様子を見せれば、継母達に何をされるか分からないので、本音は隠していた。
リーゼロッテは、見合いのために初めて新しいドレスを買ってもらった。異母妹ヘドヴィヒのお下がりのドレスは色が派手だったり、ゴテゴテとした装飾が付いていたりしてリーゼロッテの好みでは全くなかった。新しいドレスは、既製品ではあったが、彼女自身の好みで選べた。襟が詰まっていて慎ましい形のドレスだが、爽やかな若草色がまだ若いリーゼロッテに似合っていた。
継母フラウケと異母妹ヘドヴィヒは、リーゼロッテが新しいドレスを買ってもらえただけでも気に食わないのに、好きなデザインのドレスを選ばせてもらえた事に憤慨していた。だが役に立たなそうだった嫁き遅れの娘がやっと駒として仕えそうなのだ。父エーリヒは、妻子に文句を言わせなかった。
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