8.結婚に対する周囲の反応

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 アントンとリーゼロッテの結婚式は、マンダーシャイド伯爵領の主都の教会で行われる事になった。双方の親、特にアントンの両親は王都の大聖堂で盛大な結婚式を開いて王太子と宰相も招待しようと主張したが、アントンは頑なに地元での小規模な結婚式に拘った。マンダーシャイド伯爵領は、王都から1日以内で往復できる距離ではないので、領地で結婚式を挙げるなら、時間的にも警備上も王太子と宰相を招待できる可能性はなくなる。ジークフリート王太子は、アントンの結婚式に出席できない事にがっかりしていたが、アントンは仮初に過ぎない結婚式に自分の大切な主人を招待する気はなかった。それでもアントンの父パトリックは、直前までグチグチと文句を言っていた。 「どうしてそんなに頑なに大聖堂での結婚式を拒むんだ? 領地での結婚式だと、王太子殿下と宰相閣下を招待できないじゃないか」 「いえいえ、それでいいのですよ。殿下と閣下はお忙しいのだから、私の結婚式などにいらしていただく訳にはいきません。それに仕える殿下がまだ結婚されていないんです。そんなに盛大な結婚式をする訳にいかないでしょう」 「殿下はお前より10歳も年下じゃないか! はぁ……本当にお前は使えない。王都から遠い領地で結婚式を挙げるから碌に招待客を招けないし、我が家にもっと役に立つ縁談は山ほどあったのにあんなみすぼらしくて持参金の少ない女を選ぶし、本当に冗談じゃない」 「持参金は、昔と違って妻の個人資産ですよ。夫側が自由に使えるお金じゃないんです」 「それは建前だろう?」 「建前じゃないですよ。業突く張りの夫が妻を殺して何度も結婚して持参金詐欺をしないように法律が変わったんですからね。あ、いや、父上の場合は業突く張りの舅か」
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