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アントンが夫婦の寝室に入って来た時、リーゼロッテは寝台に腰掛け、狼の前の子兎のように震えて夫を待っていた。アントンはそれを見て一瞬ニヤリとしたが、その表情は緊張を抑えようと必死なリーゼロッテには全く目に入らなかった。
アントンは、リーゼロッテの隣に座って優しく話しかけた。
「そんなに緊張しないで」
そう言われてリーゼロッテは初夜を後回しにできるのではと一瞬期待したが、その期待はすぐに霧散した。
「でも、これは政略結婚だから初夜は引き延ばせないんだ。父上達も期待しているし。ごめんね」
「も、もちろん、承知しております……」
「さあ、こっち向いて」
アントンがリーゼロッテの顎を掬った時、彼女は緊張のあまり口をきつく閉じてしまった。アントンがそこにキスをしたので、歯が当たってゴチンと音がした。
「ごめん、痛かったね。僕がキスしたら、口を少し開けて目をつぶって鼻で呼吸してくれる?」
アントンはリーゼロッテに再びキスをし、舌を差し入れた。リーゼロッテは驚いてビクッとして舌を引っ込めた。
「舌を引っ込めないで絡めて……そう、いいよ……」
「んん……んふぅ……」
リーゼロッテがキスで蕩けた様子になると、アントンは彼女を寝台に押し倒し、彼女の夜着を乱暴に引き裂き、薄い胸を露わにした。肩から上腕にかけてみみずばれのような古傷も丸見えになり、リーゼロッテはもう片方の腕で隠そうとしたが、アントンに腕を寝台の上に押さえつけられた。
「ア、アントン様?! どうして?! い、いやっ!」
「初夜は延期しないんだから拒否しちゃ駄目だよ。大丈夫、こんなの普通だよ。初夜の夜着は破るためにあるんだ」
「そ、そうなんですか?! で、でも私の肌はみ、醜いので、そ、その、男性はする気をなくすると……」
「誰がそれを言ったの?」
「継母(はは)と妹が……」
「チッ、碌でもない奴らだ」
「え?! 今、なんておっしゃりましたか?」
「なんでもないよ。君が頑張った証だ。醜くなんてない」
「あっ、そ、そんな所、だ、駄目……ああ……」
アントンは、彼女の茶色いみみずばれの痕に舌を這わせた。美しい夫が醜い傷痕を舐めている様は倒錯的で、古傷からリーゼロッテの頭のてっぺんと子宮に向かって疼きがビリビリと伝わっていった。
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