13.義母の励ましと叱責

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13.義母の励ましと叱責

 アントンは、マンダーシャイド伯爵家の未来を見限り、クーデター後の離縁も予定している以上、リーゼロッテに次期当主夫人としての役割を全く求めていない。結婚当初は両親、特に母親のアウグスタがリーゼロッテに伯爵夫人としての心構えや仕事を教えたがったが、アントンは突っぱね、アウグスタは渋々引き下がった。それでもリーゼロッテにお茶会の主催を一緒にやらせるようになど、アウグスタから時々横やりが入ったが、断固拒否して両親とリーゼロッテがなるべく接触しないようにした。  リーゼロッテは、実家で妾の子として使用人のような扱いを受けて育ってきたので、普通の貴族令嬢が受ける淑女教育もダンスの訓練も受けたことがなかった。アントンは、リーゼロッテが元々望んだ領地経営の補佐などは一切学ばせなかったが、テーブルマナーやダンス、刺繍など、貴族令嬢の受ける一通りの習い事をさせた。  だがアントンが家にいない隙に、リーゼロッテが伯爵家の家政に関わらない事にアウグスタがチクチクと嫌味を言い、リーゼロッテは肩身を狭く感じるようになっていた。  アントンは、自分が在宅していない時にはリーゼロッテに腹心をつけて両親を接近させないようにしていたが、腹心にも本来の任務がある上、使用人が自分達を制止して息子の妻に会わせないなど、アントンの両親には我慢ならない。アントンの部下は、伯爵家に雇用されているのでなく、アントン個人に直に雇われているのだが、彼の両親にはそんな事は関係なかった。とにかく自分達は高貴な身の上で、アントンの部下達は所詮使用人という認識である。彼らもアントンの両親を実力行使で排除して怪我させる訳にはいかないので、結局大した抑止力にならなかった。
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