13.義母の励ましと叱責

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「あの子、何もしなくても好きな事をして過ごせばいいとか貴女に言っているでしょう?」 「あ、はい……」 「そのままでいいと思ってるの?」 「い、いえ……」 「でも、どうせいつもあの子に言いくるめられているんでしょう?」 「ええ、その……」 「貴女はアントンの正式な妻、この家の次期伯爵夫人よ。次期伯爵の支えとなるの。他の身体だけの女と違って、その場限りの快楽だけの関係じゃない」 「はい、その通りです……」 「でもあの子が甘やかしている通り、貴女が何もできないままなら、貴女は何になるの? ただのお飾りの伯爵夫人? 子供を産むだけの道具? それだったらこっそり余所でこさえてきて貴女の子供に偽装する事だってできるのよ。次期伯爵夫人として誇りを持ちなさい」 「で、では、私は……」 「そう。何をすればいいか分かるわね?」 「はい。お義母様、伯爵夫人の仕事を教えていただけませんか?」 「そうよ、そう来なくちゃいけないわ。まずはね、さっきはああ言ったけど、正当な血筋の後継ぎを産む事が伯爵夫人の1番大事な務めよ。定期的に閨の回数はこなしているみたいだけど、中々子供ができないなら、夫の気を引いてもっと閨をするようにしなさい。それで実際、閨はどうなの?」  リーゼロッテは、閨の赤裸々な話を義母に尋ねられるなど思ってもみなかったので、何も答えられずに赤面して俯いた。 「まあ、いいわ。私に話せないなら、効率よい子供の授かり方を侍医に相談しなさい」 「は、はい……」  侍医に相談したいと言えば、アントンは焦らなくていいと言うだろうとリーゼロッテは分かっていた。でもアントンに内緒でマンダーシャイド伯爵家の侍医に相談する程、彼女は勇気を持てない。仮にリーゼロッテが相談したとしても、侍医はアントンに抱きこまれているので、リーゼロッテが未だに処女である診断結果を伝えないはずである。だがリーゼロッテもアウグスタもそんな事は露程も知らなかった。
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