2.『嫁き遅れの穀潰し』に舞い込んだ縁談

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 翌日、ヘドヴィヒがリーゼロッテに何か言いつけようとすると、フラウケがやって来た。 「貴女、そんな薄汚い服は脱いでこれを着なさい。マナーの先生が来るから、早くしなさいよ」 「は、はい……」  そう言ってフラウケがリーゼロッテに投げてよこしたのは、ヘドヴィヒのお古であった。ヘドヴィヒは、リーゼロッテよりも7歳も年下だが、発育がよくて15歳の少女にしては背が高く、胸も豊かに発達している。それに対してリーゼロッテは痩せっぽちで背が低い。 「ちょっとお母様! それ、私が一昨年着ていたのだわ! こんな女にもったいないじゃないの!」 「いいのよ――リーゼロッテ、早く着替えなさいよ!」  フラウケはヘドヴィヒを自分の部屋まで引っ張っていった。ヘドヴィヒは、母と2人きりになると、怒りを爆発させた。 「お母様、どうしてあの女に私のお古をあげた上に家庭教師までつけるの?!」 「お父様は、アントン・フォン・マンダーシャイド様にあの娘を嫁がせるつもりなのよ」 「ええ?! それって私に来た縁談よね?! あんな美丈夫にあの女を嫁がせるなんてもったいないわ! 私が彼と結婚する!」 「でもアントン様は1人息子よ。貴女が彼に嫁いだら、お父様はあれに婿を取るでしょう。そんなの私は耐えられない!」 「だからってあの女に良縁はもったいないわ。お父様を説得してみる!」 「駄目よ。私も説得できなかったの。仕舞いには怒られてしまったわ」 「でも私なら、お父様を説得できるかも」  ヘドヴィヒは、父にかわいがられていると自覚していたので、エーリヒに直談判したが、全く相手にされなかったばかりか、怒られてしまってショックを受けた。
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