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3.意地悪な侍女と家庭教師
リーゼロッテは、最低限の読み書きはできたが、それだけであり、貴族令嬢の教養水準には遠く及ばない。クレーベ語や大陸共通語、歴史、マナー、ダンスなどを家庭教師から突貫工事のように習う事になり、身支度をする為に侍女もつけられた。継母フラウケと異母妹ヘドヴィヒは、そんなリーゼロッテの待遇にもちろん不満を持っていて家庭教師や侍女として自分達の息がかかっている人間をエーリヒにさりげなく推薦してねじ込んできた。
リーゼロッテ専属になった侍女は、彼女の髪を整える振りをしながら、髪の毛を強く引っ張って抜いたり、リーゼロッテに気が付かないように彼女の服装をわざと乱しておいて家庭教師の前で恥をかかせたりした。
「お嬢様、今日はマナーの先生の授業ですからね。装いには特にきちんと気を付けないといけませんね」
そう言ってリーゼロッテの侍女は、彼女にヘドヴィヒのお古のデイドレスを着せた。リーゼロッテは、前身頃のボタンが緩くなっているような気がなんとなくしたが、侍女に聞くと意地悪をされるので、文句を言わずに黙っていた。
ドレスの着付けが終わると、侍女はリーゼロッテの髪型に取り掛かった。だが侍女が髪の毛をこれでもかというぐらい引っ張ったので、ブチブチと髪の毛が抜けた音がして痛みがリーゼロッテの頭皮に走り、つい痛みを訴えてしまった。
「い、痛い……」
「お嬢様の髪の毛は崩れやすいから、しっかり結わないと駄目なんです!」
未婚のリーゼロッテはハーフアップにするだけなので、そんなにぎゅうぎゅうに引き詰めなくてもいいはずである。なのに、侍女は有無を言わせず強く引っ張ったまま髪を結ったので、リーゼロッテのこめかみは髪の毛に引きつられてぴくぴくと痛んだ。
それから侍女に化粧を施されたが、いつも通りの厚塗りにされてしまった。これでは未婚の令嬢というよりは娼婦のような化粧で、特にマナー講師には評判が悪い。リーゼロッテは1度さりげなく厚化粧過ぎると侍女に指摘したが、フラウケに泣きつかれ、使用人をいじめるなと説教されてしまった。
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