21.純潔と引き換えるモノ*

1/4
前へ
/94ページ
次へ

21.純潔と引き換えるモノ*

 ヘドヴィヒは吐き気を催しそうな行為を何度も我慢し、手紙を書くのに必要な物を牢番から得た。本当は脱獄したかったが、純潔と引き換えと言っても牢番が首を縦に振らなかったので、リーゼロッテ宛に手紙を送るのだけで手を打った。  フラウケとヘドヴィヒがリーゼロッテにしてきた事を冷静に考えれば、手紙だけで彼女が2人の釈放を夫にとりなしてくれるのか、甚だ疑問のはずだが、2人はなぜかリーゼロッテが自分達の言いなりになると信じていた。  カツンカツンと響く足音と食事を運ぶワゴンの車輪がゴロゴロと転がる音が聞こえた。  ヘドヴィヒは、今日処女を失う覚悟を決めた。あんな不潔で不細工、身分も低いずっと年上の男に純潔を捧げるのは、ヘドヴィヒだって悔しい。本当ならもうとっくに、ようやくヘドヴィヒも納得できる入り婿を迎えていたはずなのだ。だけど、このまま修道院で一生過ごすのなら、一生処女で本心から受け入れられる男性と結婚できる機会などない。それなら割り切って純潔を役立てよう。そう思わなければやるせなかった。  いつもの通り、フラウケとヘドヴィヒの独房の扉の窓が開き、食事が差し入れられた。 「食事だ」 「手紙は準備できてる」 「そうか。じゃあ、始めるとするか。下着を脱いでアソコを窓に押し付けろ」 「その前に約束して。この手紙を絶対にリーゼロッテ・フォン・マンダーシャイド宛に送るって」 「ああ、分かった」 「それと避妊はしてね」 「ああ。さあ、早く。時間がない」  あらかじめ独房の扉の前に置いておいたテーブルの上にヘドヴィヒはよじ登った。彼女は決して重くないのに建付けの悪いテーブルはギシギシと軋んだ。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加