27.野獣に気持ちが通じた瞬間*

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「いいんです……アントン様の本当の妻になれたから……」 「で、でも……初めてだったのに床でこんな乱暴に抱いてしまって本当にすまない」 「そう思ったら、からは優しくして下さい」 「いや、駄目だ。次はない。ロッティ、これで分かっただろう? 発情発作が起こると、私は何が何だか分からなくなってしまって野獣のように乱暴な性交をしてしまうんだ」 「それなら尚更、他の女性となんてできませんね。ああ、男性とも駄目ですよ?」 「ロッティ?!」  アントンは、男性とも関係を持っていた事をリーゼロッテに知られているとは思わず驚いた。 「私は案外嫉妬深いんです。アントン様を誰にも渡したくないです」 「去勢されたら、誰にも見向きもされないよ」 「そんな事ないです! 私がアントン様を離しません!」 「こんな男の元にいたら、駄目だよ。すぐに避妊薬を入手してくる。それを飲んだら、出て行ってくれ。当面の生活に十分な慰謝料を渡すよ。でももし修道院に入りたいなら、入る手続きは今からでも急ぎでしよう」 「アントン様は言いましたよね、ここを去ったら、私はどこに行くのかって。どこにも行く当てなんてないから、修道院に入るしかないでしょう。でも今は修道院に入るにも多額の寄付金が必要だって聞きました。残った貴重な財産をそんな事に使ってほしくありません。仮に修道院に入らないとしても、貴重な財産から慰謝料なんていただく訳にいきません。何より私はアントン様と一緒にいたい! アントン様の側以外、どこにも行く所なんてないんです。だから責任とって私をこのまま側に置いて下さい!」 「ああ、ロッティ……私は君に降参だ……」  アントンはリーゼロッテを抱きしめて泣いた。 「でも避妊薬は飲んでくれ。これから私達の暮らしは厳しくなるから」 「私はアントン様との子供を持てるなら欲しいです。アントン様が……すみません、こんな事言いたくないんですけど……去勢される前に私にチャンスを下さい。愛する人との間に子供が欲しいんです」 「でも私は平民になるんだ。明日から住む住居も2部屋しかないし……」 「アントン様と一緒にいられるなら何だってします! ましてや私達の子供が来てくれるなら、何だってできます! 働いてお金を稼ぎます。私は実家で下女のような仕事をしていたんですよ。外でも働けるに決まってます!」 「ああ……ロッティ!」  アントンは、リーゼロッテを再び抱きしめてむせび泣きした。
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