29.2度目の初夜*

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 リーゼロッテは、一大決心をして寝間着を脱いだが、腕と背中の古傷を気にしてショールのように肩に羽織った。そんな彼女をアントンはそっと抱きしめた。 「ロッティ、直接肌を触れ合って愛し合いたいよ……」 「でも汚い肌ですから……」 「汚くなんてないよ。君が頑張って耐えた証拠だ。もちろん、君がそんな事に耐えるなきゃいけないような事をした人間は恥ずべきで、本来君はそんな仕打ちを受けるべきじゃなかった。だけど、それに耐えた君の頑張りは何も恥ずべき事じゃない」 「うっ、うっ……アントン様、あり……がとう……ござ、い、ます……」  リーゼロッテはアントンの胸に縋りついて思いきり泣いた。 「君を素晴らしい、愛しいって思うのは夫として当たり前だよ。なのに今まで酷い夫で本当に……僕は愚かだった。ごめんなさい」 「今はいい夫だからもういいんです」 「ありがとう。本当にロッティは優しいよ」  アントンは感極まってリーゼロッテをますますきつく抱きしめた。 「アントン様、痛いです。力を緩めて下さい」 「ごめん……ねえ、もうそろそろよそよそしい呼び方とか話し方とか止めよう。僕の事も呼び捨てにして」 「ア、アントン……」 「ロッティ、愛してるよ」 「私も」  アントンはもう1度啄むように何度もリーゼロッテにキスをした。そのキスは次第に深く激しくなっていき、アントンは唇の間から舌を伸ばした。リーゼロッテは、彼の舌がチョンチョンと唇をつつくと、自然に口を割って舌を受け入れた。今度はリーゼロッテから舌を絡めてきた。  2人とも夢中になって角度を変えながらキスを貪った。その合間にリーゼロッテの肩にかかった寝間着がずり落ちたが、彼女はもう気にしなかった。
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