30.愛妻の追求(*)

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30.愛妻の追求(*)

「おはよう、ロッティ」  リーゼロッテが目を覚ますと、目の前には蕩けた表情をしているアントンがいた。 「おばよう……」  リーゼロッテは1晩中喘いでいたので、喉がガラガラになってしまっていた。 「ロッティ、声が……」 「あなだのぜいよ……」 「ごめん……ほら、水を飲んで」  水を飲んで一息ついたリーゼロッテにアントンが抱き着いて腰をぐりぐりとなすりつけてきた。熱くて硬い物が彼女の太腿に当たり、アントンの唇がリーゼロッテのそれに重なった。彼女の視界がキスで塞がれる前、彼の目に情欲の光がありありと見え、昨日の経験からこれから起こりそうな事が彼女には手に取るように分かった。火がついてしまったら、解放されるまで1時間は下らない。 「ま、待って。仕事に行かなきゃいけないでしょう?」 「2度目の初夜だよ。流石に陛下だって休暇をくれるよ」 「一昨日、引っ越した時に離婚を止めるって急に決めて、昨日だって1日中引っ越しで王宮に行かなかったのにどうやって陛下に休暇をいただいたの?」  にわか愛妻家になったアントンは、妻の追求に弱い。彼女の疑いの目にすぐに降参した。 「実は最初から1ヶ月の休暇をいただいているんだ」 「1ヶ月?! 嘘でしょう?! どうして?」  ただでさえ、王宮の文官はクーデターで大分数を減らしている。問題山積の今のクレーベ王国で新国王ルイトポルトの1番の側近のアントンがそんな長期の休暇を何の理由もなくもらえるはずがない。 「ちょっと色々あって……でも陛下と連絡は取り合って家でできる書類仕事はやるって約束してるんだ」 「休暇なのに?」 「あ、うん……」 「じゃあ、なぜわざわざそんな長期休暇を取ったの? まさかすぐにその……手術されるから?」
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