30.愛妻の追求(*)

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 アントンは、旧宰相派の家の嫡男として去勢手術の罰を受ける事ににはなっていた。ルイトポルトはそれに反対して堂々と恩赦を受けろと説得しようとしたが、不満分子の台頭が怖いアントンは去勢手術を受けた振りをする事になった。  元々、アントンは新しい住居に1人で引っ越すつもりだったから、3ヶ月程、術後と称して家に閉じこもっていればいいと思っていた。でもその計画は、リーゼロッテとの再構築で崩れた。珍しく色ボケしたアントンの頭からはそれがすっかり抜け落ちていた。 「まさか……手術はすぐなの?!」  リーゼロッテは泣きそうだ。アントンは再び愛妻に陥落した。 「実はね……あ、そうだ、今から言う事は誰にも話さないって約束してくれる?」 「夫の秘密は妻の秘密。もちろん誰にも漏らさないわ」  アントンが偽装去勢手術の話をすると、リーゼロッテは涙を浮かべて安堵した。 「よかった。予後が悪くて亡くなる方もいるって聞いたから、心配していたの」 「本当にアレを切られたら君を抱けなくなっちゃうしね。秘密を打ち明けられてよかったよ。そうじゃなかったら、こっそり自慰するしかなかった」 「あら、こんな狭い家に住んでいたら、こっそりその……じ、自慰してもすぐにばれてしまうわよ。寝室だって同じなんだし」 「そうか。それなら秘密を打ち明けられて尚更よかった」 「でも発情発作はどうするの? 家にいる時はいいとして仕事中は?」 「それは自慰で何とかするよ。もう大っぴらに娼館に行ったり、他の者と性交したりできない。それに君以外とはもうしたくないんだ」 「でも前は……その、じ、自慰だけじゃ我慢できなかったのよね?」 「えっと、まぁ、その……」  アントンは都合の悪い真実をつく妻の追求に決まりが悪くてタジタジとなった。 「じゃあ、毎日仕事に行く前にしましょう! 朝、性欲を発散しておけば少しは違うんじゃないかしら?」 「え?!」  あっけにとられていたアントンは、リーゼロッテにボスッと寝台に押し倒された。その後は、散々愛撫し合って絶頂して身体を繋げ、アントンはひたすら子種をリーゼロッテの子宮に注いだ。
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