4.女癖の悪い見合い相手*

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 5年程前、アントンはアレックスの仲介で貧民街からヨルク少年とその義妹ペトラを影の見習いとして引き取った。アントンは、宰相の後妻と連れ子を頻繁に訪問している王弟ヨアヒムの侍従兼執事見習いとしてヨルクを送り込み、ペトラはマンダーシャイド伯爵家を拠点に影として働いている。  アントン自身もハニートラップで情報収集をする事もあり、少年の頃から媚薬の類に耐性をつけている。ただ、数年前から副作用が出始めて性欲の衝動が抑えられない事があった。そんな時には、夜会だったら後腐れのない関係を楽しむ未亡人や既婚の夫人と性交し、家にいる時には個人的に諜報活動のために雇っている部下と身体を繋げた。彼らの中にもアントンと同じように発情発作に苦しむ者がおり、性交でお互いに性欲を発散させるのだ。それは彼らにとって機械的な需要と供給であって、罪悪感を覚えもしなければ、不道徳とも思っていない。  そのため、社交界で男女を問わず、色々アントンの浮名が流れている。だが社交界にデビューしていないリーゼロッテも、社交界デビューしたばかりの異母妹ヘドヴィヒもそんな事は露程も知らなかった。ヘドヴィヒは、夜会でアントンを見かけて素敵な男性と感じたが、アントンは社交界デビューしたばかりの処女の令嬢を相手にしないので、ヘドヴィヒが彼と話す機会はなかった。  アントンが自分の屋敷で部下と性交する時は、リネン室か執務室で、ペトラが頻繁に相手になった。リーゼロッテと見合いが決まった後も、それは変わらなかった。
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