雨上がり殺人事件

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 彼女が今日聞きたいのは先月にあった殺人事件についてだ。  俺のファイルには「雨上がり殺人事件」と名前を書いた。  ある女優志望の27才の女性が自分の住むアパートの3階のベランダから落下して死んだと最初に報告を受けた事件である。  死んだ女性の名前は坂下しずく。  玄関は鍵が掛かっていた。  ベランダには洗濯物が干してあったがすべて男物で、同棲していた男の物だとあとから確認される。  彼女はあるテーマパークのキャラクターがデザインされた白いハンカチを握りしめたまま落ちて死んでいたので、初めは何らかの不慮の事故で落下したのではないかと思われた。  同棲していた男は大手の商社マンでエリートだった。後藤賢一34才。二年前から半同棲していたが最近は別れ話が出ていたという話だった。  上司からの紹介で重役の娘さんとお見合いをしていたことを男本人から聞く。悪びれた様子もなくお見合い相手と真剣交際をするために別れを切り出していたとはっきり警察相手にも話したようだ。  しかし、女性が死んだ時間は本社ビルで会議がありアリバイは完璧で、お見合い相手には半同棲していることはもちろん付き合っている女性がいることも隠していた。早めに刑事にすべてを告白したのはお見合い相手や会社の方に今回の事件を秘密にして欲しいというお願いをするためだったようだ。  必要だと判断する材料がない限り会社の方に話す必要はないが、別件の振りをしてそれとなくお見合い相手の女性のアリバイは警察は調査していた。母親と銀座に買い物に出掛けていて疑いようがなかった。    ただ、検死のあとに分かったのが亡くなった坂下しずくさんは妊娠三ヶ月だった。近所の産婦人科を調べ回ったら一ヶ月前に検診を受けていた病院が見つかる。つまり本人は妊娠を知っていたことになる。    そこで恋人の後藤賢一をアリバイはあるが徹底的に調べることになったのだが、殺人事件かどうかの判断さえも難しい事件になる。  そこで内二(うちふ)耕介(こうすけ)刑事から俺に連絡が来る。  いつものように根掘り葉掘り詳しく話してくる。
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