雨上がり殺人事件

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 雨上がり。  雨上がりは好きだけど、なんかカエルのお腹を匂うような生臭い匂いがする。  だけど、景色が生まれ変わったようなキラキラした気分になるのは楽しい。    空を見上げると、虹があった。  思わず如月華絵さんに写真を撮って送りたくなる。    耕介一途な彼女に何を考えているんだろうと自分に嫌気が差す。  でも、誰かを思うのは久しぶりで、それはそれでいいもんだ。  片思いも恋は恋か。  今夜は耕介のアパートにでも押し掛けて酒でも飲もう。  そんな帰り道の酒場の壁に、ポスターが貼られていた。  小さな劇団の公演が来月に近くの劇場であるようで、その宣伝のポスターのようだった。  そのポスターの下の出演者の中に、坂下しずくの文字が印刷されていた。準主役だったようだ。  残念だ。見たかったなぁ。  その役は横恋慕して主役から恋人を奪う悪女のようだった。  もしかしたら、役柄を演じることでのめり込んで役と同化する人がいると聞く。彼女が優しい役を演じる予定になっていたら、あの事件も違ったのかな?  そんなことを、  ふと、  考えて、  しまった。  人生は悲しい。  いろんな偶然が重なる。  だから、面白いこともある。  しばらくは雨上がりが、  淋しく感じるだろう。  探偵金内二(かねないに)悲惨(ひさん)、特別編。  終わり。
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